2時間以上かかる橋梁点検をわずか5分に
『水上ドローンを用いた小規模橋梁点検診断システム』

AI診断・データの可視化により、小規模橋梁の点検を省力化
AI診断に必要な橋梁の画像・映像の撮影に、炎重工の水上ドローンをお使いいただいています。

早稲田大学 佐藤靖彦教授(後列 右から2番目)と研究室メンバーの皆様、長野県安曇野市職員 千田様(後列 最右)

対象は、人や点検車による点検では労力が大きい『小規模橋梁』

早稲田大学 佐藤靖彦研究室では、
橋梁をはじめとした社会インフラの長寿命化へ向けた研究を行っています。

長野県安曇野市は、
管理している橋梁の90%以上が「堰や用水路にかかる15m未満の小規模橋梁」という自治体です。

上図の通り、小規模橋梁の点検は、桁下が低い・橋長が短いといった理由で「人や点検車による点検は労力が大きい」といいます。
早稲田大学 佐藤靖彦研究室と長野県安曇野市は、小規模橋梁点検の省力化を目指して同システムを共同開発しています。

同システムと水上ドローンを使って橋梁点検を行う場合、1橋わずか5分で点検できるとのことです。

同システム導入により削減できる作業時間

上図「橋梁点検にかかる時間の目安」を参考に、以下例の通りに橋梁点検を行っている事業者が、現在行っている点検方法から同システムにした場合、1ヶ月にどれくらい作業時間を削減できるのか計算しました。

例:2人で1日3橋を点検、作業日は10日/月

  • 点検車 :126 - 5 = 121分 / 橋 × 2 × 3 × 10 = 7,260分(121時間)/月
  • 梯子  :114 - 5 = 109分 / 橋 × 2 × 3 × 10 = 6,540分(109時間)/月
  • 通常目視:96 - 5 = 91分 / 橋 × 2 × 3 × 10 = 5,460分(91時間)/月

大幅に作業時間を削減できます。

水上ドローンで撮影した画像を使ってAI診断、結果を可視化

水上ドローンを使って撮影した橋(桁下部分)の画像 (提供:早稲田大学 佐藤靖彦研究室)
分割・分類の自動処理後にAI診断システムでスクリーニング (画像提供:早稲田大学 佐藤靖彦研究室)

同システムでは水上ドローンで撮影した画像を自動で分割・分類し、AI診断システムでスクリーニングを行います。
スクリーニング結果は地図上に可視化・一元管理されることにより、橋梁点検の省力化に大きく貢献します。

水上ドローン導入後「スムーズに撮影できる」ようになった

同システムには、橋の撮影が欠かせません。
当初はラジコンボートを使って撮影していたそうです。

しかし水中部にスラスタ(推進力)を有するラジコンボートでは、藻が絡まる・堰や用水路の段差を越えられないといった問題があり、スムーズな撮影が難しく、問題が発生するたび水から引き揚げて対処するのも非常にストレスで、せっかくの省力化技術を活かしきれていないという課題をお持ちでした。

藻が絡まない・堰や用水路の段差を越えられる

お話を伺い、プロペラが船体上部についている双胴艇タイプの製品をベースに、AI診断用の撮影に適した仕様を提案・開発しました。

プロペラは水面より上にあるため、藻が絡むことはありません。
水中生物を傷つける・不必要に水を撹拌するといったリスクもありません。

堰や用水路の段差を越えることもできて、スムーズな撮影が可能となりました。

複数の橋梁を連続して撮影できる

水上ドローンは「水上を航行する」ため、1つの河川や堰・用水路にかかる複数の橋梁を、1台の水上ドローンで通過しながら連続で撮影することができます。

水上ドローンの操船・撮影は、通信距離300mのFPVプロポを使って陸地から遠隔操作で行います。
1人で対応可能なため、点検車などの準備や交通規制は不要です。

船体上部にプロペラがあるため、水深10~15cmほどの浅い水域で利用可能
水上ドローンが長野県安曇野市矢原堰にかかる橋の下を通過する様子
コンパクト設計により、現場への持ち運びも省力化

小さな橋の桁下に入って撮影を行うには「小型である」ことは必須要件です。
また、スーツケースに収まるコンパクトな設計により、電車移動や現場での持ち運びも容易に行うことができます。

慣れた手つきで手際よく片づける研究室メンバー

将来は、小規模橋梁の点検を省力化したい全国の自治体・橋梁点検事業者などへ提供

現在は、長野県安曇野市との共同開発を「安曇野モデル」として実装を目指しています。
「安曇野モデル」実装後、同じように小規模橋梁の点検を省力化したい全国の自治体・橋梁点検事業者などへ提供を進めていくとのことでした。

弊社も引き続き、水上ドローンのさらなる小型化・軽量化に努めてまいります。

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